●角度の違う屋根が近接した、内外空間の混在した建物

「コンゴ民主共和国日本文化センター(the Congo-Japan Complex)」は、コンゴ民主共和国キンシャサ市の中心部、ゴンベ教員大学の敷地内に、日本外務省の草の根無償援助資金で建設された建物である。

コンゴは数年前に内戦が終了し現在急速な経済成長の中にある国である。資源大国であることもあって現在世界各国が開発支援に乗り出し、中国はとくに現政権に巨額の支援を投下している。日本は80年代に大規模の政府開発援助を行いコンゴ川に巨大な橋を架けたことはよく知られているが、政権が入れ替わった現在は、国際支援競争にやや乗り遅れているというのが実情である。大使館とJICA(国際協力機構)という政府関係機関のみが現地で活動しており、日本の民間企業やNPOなどは日まだ入ってきていない。そのようななかで、松原弘典研究室を中心とした慶應義塾大学のチームが2008年からキンシャサ郊外で「アカデックス小学校」を設計建設しており(中華建築報では2010年4月10日に紹介されている)、現地大学と対等な関係に立った教育交流活動をしていることは、単なる資源外交とは異なり、日本のみならず世界のなかでも独自なアフリカ支援の形として注目されている。この「コンゴ民主共和国日本文化センター」は、松原研究室が建築設計を行い、アカデックス小学校の建設ボランティアチーム「アカデックス」が日本国外務省の小型援助資金を得て施工したものである。

敷地はキンシャサ市の中心部ゴンベ(Gombe)地区のゴンベ教員大学のキャンパス内にあり、土地は大学から無償提供され、日本国外務省の資金は建設費にのみ使用された。建物は一辺が約19メートルの正方形平面の平屋で、この建物内に十字の半外部の廊下が貫通し、その間に大きさの違う諸室-道場?教室?事務室?茶室など-が配置されている。現在はこの建物で日本語クラスが開講され、日本の慶應大学の学生とゴンベ教員大学の学生が交流するなど、日本の文化をコンゴで普及啓発する重要な拠点として整備されつつある。
210ミリ厚2420ミリ高さ1050ミリ幅の43枚のRC造の壁柱を建て、その上を梁で繋いでいるが、この梁が高温多湿な雨季の雨に対応する雨どいとなる。3つの異なるスパンを持つ木造トラスの屋根は、高さをそろえることで角度の異なる屋根が近接して置かれているように見えるだろう。半外部の廊下と外部中庭は日射の強い乾季には重要な環境的なバッファとなり、人のたまりとなる空間である。外から見るとシンプルな正方形の平面だが、中に入ると内部空間と半外部空間が隣り合わせで置かれることで内外が混在した印象を与え、開放的な空間を実現している。
大型の政府間援助と異なる小型の草の根資金(1000万日本円)で、しかも建設主体を現地ボランティアグループが工事を受注して建設されたために、他の一般的な政府開発援助案件のように高性能で精度の高い建物にはなっていない。しかし多くの政府援助案件がアフリカの現地には不釣り合いなくらい上級の仕様になっていることが多いのに対し、本建築は適度に精度が低く設定されたおおらかな建築になっていると思う。いい建築とは「精度が高い建築」ではなく、「その建物が建つ場所とうまくバランスが取れている建築」だと私たちは考える。これはその実例になっていると言える。




プロジェクト名:
コンゴ民主共和国日本文化センター
設計:慶應義塾大学SFC松原弘典研究室
設計担当:松原弘典、立元遥子
所在地:コンゴ民主共和国キンシャサ市ゴンべ地区Pere Bokaアヴェニュー、ゴンべ教員大学北区画
建築面積:271.3平米
延床面積:271.3平米
構造:鉄筋コンクリート造(屋根:木造トラス架構、壁:レンガ壁)
設計時間:2011年12月-2012年3月
施工時間:2012年3月-2013年3月
竣工時間:2013年3月
施工:ACADEX小学校建設チーム
施主:日本国外務省
撮影:東京松原弘典建築設計事務所